【著作部門】思考としてのランドスケープ 地上学への誘い -歩くこと、見つけること、育てること-
受賞者氏名:石川 初
授賞理由:石川氏は、都市や農村などのフィールドで実際に「面白がりながら」歩き、見て、抽出した事象について、専門領域の観点から深く洞察するプロセスを丁寧に描いている。そのうえで、実務に長く携わった経験をもとに、ランドスケープ的な思考とは何かという問いを立て、その使い方を説得力をもって記述している。「ランドスケープ的思考」について、最後は身近な花壇の整備に例えて解説するなど、専門的な表現に陥ることなく、平易でわかりやすく、かつ、ひきこまれるような優れた叙述がなされており、これから社会で活躍する学生をはじめ広く専門領域内外の読者にリーダブルな構成となっている。
同時に、ランドスケープの領域・ランドスケープ的な思考ツールを関連分野との関係で明らかにしており、ランドスケープの専門性を他分野の読者に紹介し興味を抱かせるファシリテーションが期待でき、かつ、造園分野内部にいる者に対しても、自らの専門性を再確認させる視点を与えている。以上より、2019年度日本造園学会学会賞(著作部門)を授与することに値すると評価された。